第32回秋田県JA大会

第32回秋田県JA大会 (開催日:2024年11月27日)

食と農と地域の未来を築く ~次世代につなぐ協同の力~

第32回秋田県JA大会開催(2024年11月27日:秋田市にて)

意見表明

地域農業の持続と創造

秋田県農業協同組合青年部協議会 委員長 伊藤 達也

 ただいま、ご紹介いただきました秋田県農業協同組合青年部協議会委員長の伊藤と申します。
 私は、能代市朴瀬地区で水稲・大豆・ネギ・キャベツ・山ウド延べ 30ヘクタールを両親と妻と経営し、今年で就農12年目となりました。
 本大会の開催にあたって、次代を担う立場から意見表明いたします。

 全国的な人口減少・高齢化の流れは私の地域においても例外ではなく、離農者が後を絶たず、耕作放棄地は年々増え、作付けを受け入れても雇用が間に合わず断らざるを得ないケースなど、同じ現状の生産者も少なくないのではないでしょうか。

 本大会議案の「地域農業の持続と創造」について考えます。
 現在、先ほど申し上げました農業従事者の減少のほか、生産経費の高止まりや異常気象による自然災害の頻発など様々な問題があります。これは私一人の問題ではなく、多くの方の前に立ちはだかっています。ですが、それを前に停滞するわけにはいきません。
 私には、これらの課題によって離農者が増えてほしくないという思いがあります。そして、課題を乗り越えていくうえでは仲間たちと共有することが大切です。

 私は、組織とは「共通する目的を持った仲間達」と定義できるのではないかと考えます。一人では達成が困難な目的でも、多くの仲間と同じベクトルで取り組む事で達成できると思います。情報共有し解決に向かって一歩を踏み出す事で達成していく、まさに協同組合の理念の実践だと感じています。
 青年部という組織においても、一人でできる事は小さなものだが、多くの盟友がそれぞれの個性を活かし、同じ方向に向かって挑戦を積み重ねていくことで数十倍、数百倍のパワーになると信じています。

 我々青年部では、昨年より次世代へ繋がる活動として「子ども食堂」への食材提供に取り組んでいます。子育て世代だからこそ、食料基地である秋田の地で、未来を担う子供達に食べる事で苦労させたくないという強い想いがあり、これからも取り組んでいきたいと考えています。

 長い歴史と伝統によって受け継がれてきた我が国の農業ではありますが、常に新しい可能性を探り、更なる発展と持続可能な環境を整え続けなければなりません。大切なのは、農村に住む私たちが自ら考え、自らの意思で実現させていく事です。更に言えば、実現には私たち青年農業者の若い力が必要なのです。
 我々青年部は、今一度、自らの組織を成長させる為、多くの出会いから生まれる新たな可能性を原動力に自己を高め、互いに成長できる環境づくりに取り組んでいきます。
 そして、日本農業の主人公は我々だという当事者意識のもと、10年、20年、またその先の子供たちへ夢を与え続け、ワクワクできる秋田県農業をバトンタッチしていく役割があります。私たちの使命は、農業の魅力を上げる努力をし、次世代につなぐために今やるべき責任を果たすことだと思います。
 そのために青年農業者の意見は大切です。皆さまの近くにもいる原石である青年農業者の意見を聞くとともに、磨いてあげてください。私たちは感謝の気持ちを忘れず発展させます。期待して下さい!
 以上のことを申し添えて私の意見表明といたします。

人口減少下における地域の活性化

JAあきた女性組織協議会 会長 長崎 久美子

 ただいま、ご紹介いただきましたJAあきた女性組織協議会会長の長崎と申します。本日の大会議案「人口減少下における地域の活性化」ついて意見表明を述べさせていただきます。

 私は、主人と息子と3人で23ヘクタールの稲作と3ヘクタールほどの畑作経営をしております。ここ数年の大雨等による自然災害に悩まされているところです。また、水田ではカドミウムのでる場所も多く、来年からは「あきたこまちR」に期待している一人です。

 JA女性組織は、JAを拠りどころに「食と農」や「くらし」に関心のある女性が集まって活動する組織です。食農教育や地産地消、国消国産にかかわる活動、助け合い活動、料理や手芸などの趣味、健康維持向上のための運動、そして環境保全活動などに取り組んでいます。

 人口減少の中、そして少子高齢化が進んでいる今、私たち女性部員の減少も進んでおります。高齢者が孤立しないよう集いの場づくりに取り組み、地域のコミュニティを守るなどJAと共に力を合わせ、地域に根ざした女性部として歩み続けることが重要であると思っています。また、私たちの女性組織活動は、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)に直結していることから、これまでの活動を次世代へとつないでいくためにも仲間づくりや学習活動を引き続きすすめて参ります。

 私たちを取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、食料安全保障について理解をすすめ、消費者と生産者が協力しあう関係づくりが必要となります。次世代へ伝え、「食と農」のバトンを未来へつないでいくよう、青年部や生産者と共に食育活動に引き続き取り組みます。

 私たちが安心・安全に暮らしていくためには、SDGsの理念の一つでもある「住み続けられるまちづくり」も大切であると考えます。近年、自然災害の多さが目につきますが、気候変動とその影響への意識を高め、私たちにできる範囲で環境を守る活動に取り組みます。また、年齢を重ねてもはつらつと元気に生きていくためには、医療や介護の力をかりることもあるでしょう。JAと共に地域社会の発展を支えて参ります。

 結びに、今大会において決定された事項が「JAグループ秋田が目指すべき姿」として一丸となって取り組まれること、それによってテーマである「食と農と地域の未来を築く」につながることを祈念して、私の意見表明とさせていただきます。

協同組合の価値提供を支える強いJAづくり

こまち農業協同組合 代表理事組合長 遠田 武

 JAこまちの遠田と申します。
 JAこまちは、平成10年6月に11の総合農協と1つの果樹農協が合併して誕生しました。
 秋田県内陸南部に位置し、東は岩手県、南は山形、宮城の両県に接し、湯沢市、羽後町、東成瀬村を行政区としております。
 奥羽山脈一体による良質な水資源と豊かな土壌に恵まれ、 内陸性気候の寒暖差を活かした農産物の生産地として、「あきたこまち」を中心とした米をはじめ、野菜、果樹、花卉、畜産など県内でも有数の複合産地を形成し、安全で高品質な農畜産物の供給基地を目指した産地づくりに取り組んでおります。

 さて、現在、秋田県内のJA経営は大きな岐路に立っています。
 近年の農業従事者や経営耕作面積の縮小に伴い、事業取扱高・事業総利益の減少が続いており、歯止めがかからない状況です。
 こうした状況を打開するため、私どもJAグループ秋田は令和元年から県1JAを目指す組織再編協議を重ねてまいりましたが、お互いの意識に温度差が生じたことやコロナ禍で充分な協議が行えなかったことなどから、断腸の思いのもと今年1月末をもって協議を一旦休止しました。

 しかしながら、この間も本県の農業やJAを取り巻く環境が好転したとは言えません。
 県の人口は90万人を割り込むなど想定よりも早いスピードで減少が進み、農業の後継者不足による持続性が懸念されております。
 また、JA経営に関しては、これまで事業総利益の減少を事業管理費の圧縮でカバーする収支構造となっていましたが、今後は労働力の奪い合いによる人件費の上昇が見込まれることから、構造の転換を進める必要があります。

 さらに、こうして将来の農業やJAの将来を憂いている間も農業は絶えず営まれているため、私たちが立ち止まること、改革を止めることは許されません。
 持続可能な農業の実現のためには、将来の在るべき姿をあらためて模索し描くことと併行し、今を支える強いJAであり続けることが不可欠です。
 改めるべき点は改め、かつ現実を受け止めて再度スタートを切る時です。

 先ずは、それぞれのJAが自らの足元を見つめ直し、組織と経営基盤の強化を図る必要があります。
 経営戦略の高度化と計画経営の実践に向け、場所別・拠点別戦略の策定とPDCAサイクルの運用を進めるとともに、デジタルを活用した業務改善を実現します。
 また、人と人とのつながりで成立する協同組合においては、組合員や利用者から信頼されることは必須条件であるため、引き続き組織のガバナンスや内部統制の強化に努めてまいります。
 さらに、昨今の深刻な労働力不足の影響はJAにおいても例外ではなく、組合員とともにJA経営をしっかりと支える職員の確保と育成が基本であり、組合員と役職員が一体となってこそ協同組合の価値提供ができる強いJAが実現します。

 こうした取り組みを掛け声だけで終わらせないためにも、先ずはそれぞれのJAが目指すべき姿に到達するための目標数値をしっかりと掲げ、自らの経営基盤の底上げを図ることが重要です。
 現在の厳しい経営環境下においては、数値を伸ばすことはもちろん現状を維持することさえ容易ではありませんが、われわれはあらゆる英知を結集して状況を打開していかなければなりません。

 一方、ひとつのJAのみで出来ることに限度があるのも事実です。
 JAこまちでも、これまで身を切る思いで機構改革や店舗統廃合を行ってまいりましたが、こうした対応も限界に近づいていると感じます。恐らく他のJAも少なからず同様の状況にあるものと考えます。

 このため、なお一層の経営改善を進めるべく、JAグループ秋田の限られた経営資源を活かし、互いに補完し合うことを目的としてJAや連合会同士での事業連携を構築する必要があります。
 また、持続可能な健全性を確保するためには、近隣地区でのJA合併を含めあらゆる選択肢を視野に入れて取り組むべきです。
 JAこまちでは、同じ羽後町を区域とするJAうごとの合併研究会を今年7月に立ち上げ、協議を開始いたしました。
 合併が実現した際には、湯沢・雄勝地区における農業生産の向上効果が生まれるものと確信しております。

 私は、組合員の方々から時に「合併すると農協が遠くなる」「JAは自分たちの経営ばかり見ている。組合員を見捨てないでほしい」などの意見を頂戴します。
 しかし、私たちは生まれる前から存在している地区内の土地で、農業を営む組合員が居てこそ成り立つ組織であり、地域を離れて事業を行うことはできません。
 地域の農業が維持され、繁栄することでJAも潤う共栄共存であり、地域の農業が衰退すればJAも衰退する運命共同体の関係なのです。

 終わりに、私どもは、今後とも秋田の農業を支えていくのはJAであるという確固たる自負と、協同組合が提供すべき価値と社会的責任の自覚のもと、強いJAづくりを進めていくことをお誓い申しあげまして、私の意見といたします。