ちびっこ広場

米づくり

たねをまく・出芽しゅつがさせる

1.自動種まき機

  •  昔は田んぼの中に苗代なわしろ〔苗を育てる田〕をつくり、種をまいて育てていました。
     今は育苗箱いくびょうばこと呼ばれる箱に土を入れて、ベルトコンベア式の自動種まき機であっという間に種まき完了。

2.消毒しょうどく

  •  種をまいたあとは水をかけて消毒してから、うすく土をかぶせます。

種に水をすわせるワケ

 種が芽を出すためには、たっぷりの水分と酸素さんそ、てきとうな温度おんどがひつよう。かわいた種の1.2倍ぐらいの重さになるまで水をすわせます。
 種もみを1週間以上も水の中につけたり、温水器おんすいきで2日間あたためたりするのは、発芽はつがのためのウォーミングアップというわけです。

なえそだてる

1.育苗箱いくびょうばこをならべる

  •  育苗箱を、昼間の気温きおんが20℃をこえるビニールハウスにならべます。
     田の面積めんせき10アールあたり、育苗箱およそ20箱の割合でじゅんびします。

2.育てる

  •  田植え前の苗はまだ胚乳はいにゅう養分ようぶんをもらっていて、人間でいえばおっぱいからはなれない赤ちゃん。ハウス内の温度おんどに気をつけ、ビニールをときどきあけて日光に当てながら少しずつ外の空気にならし、水や肥料ひりょうもあたえて、だいじに育てます。

3.健康な苗に育つ

  •  青々と10cm以上に伸びた苗。じょうぶで健康な苗を育てれば、米作りの半分が成功したのと同じ、という意味の「苗半作なえはんさく」という言葉があるほど大切なポイントです。

よい苗、悪い苗

 太くてずんぐりした苗がよい苗。ひょろりとした苗は悪い苗。田んぼを苗を育てていた頃、北の地方では寒さで苗の育ちが悪く、みのりにひびくことがよくありました。ビニールハウスで苗を育てるようになって、気温の心配はなくなりました。が、今度は寒さに弱い、伸びすぎたたよりない苗になってしまう心配が出てきました。人間も稲も、だいじにしすぎるのはいけませんね。

大切たいせつ土作つちづく

1.たい肥をまく

  •  わらやもみがらなどをつみ上げ、成熟せいじゅくさせてつくる有機物ゆうきぶつ「たい肥」は土の中で分かいされて肥料分ひりょうぶんとなり、バクテリアのはたらきを活ぱつにし、土をやわらかくする。ほかに、土のえいよう分をおぎなって有機物ゆうきぶつの分かいをよくする化学肥料かがくひりょうもつかいます。

2.しろかき

  •  田をたがやして水をはったら、土の表面をたいらにします。この「しろかき」によって水のふかさがそろい、肥料ひりょうが全体に行きわたり、水はけも均一きんいつとなります。稲がむらなく生長できる条件がととのって、あとは田植えを待つばかり。

バランスのとれた土とは?

 米作りは土作りから。キーは水と肥料分ひりょうぶん酸素さんそ

  1. 肥料の3ようそ=チッソ〔苗の生長をたすける〕、リンさん〔くきの数をふやし、みのりをよくする〕、カリ〔葉やくきをじょうぶにする〕をたっぷりふくむ
  2. 有機物ゆうきぶつがほうふで、微生物びせいぶつ〔バクテリア〕がすみやすい→バクテリアは悪い病原菌びょうげんきんを食べてくれます
  3. 土がやわらかくて、水はけがほどよい→よすぎると肥料分や水を保つ力が弱くなります

 そういう条件がそろうと、バランスのとれた土になります。ほとんどの田んぼの土には何かが不足しているので、肥料を入れたり、水はけがよすぎたら粘土ねんどをくわえたり、欠点をおぎなってあげます。土をよくたがやして肥料分とかきまぜ、あたらしい酸素をたっぷりすわせてやることも大切。根がのびのび成長するためにも、最低15cmほりおこすのがりそう的です。

んぼの構造こうぞう

  •  山からとけだした養分をたっぷり含んだ川の水は、用水路を通じて田んぼを潤します。作土層は稲を育てるために耕された、養分や有機物に富んだ土の層。その下の鋤床層は土がしっかり固めてあるので水を通しにくく、粘土質の土を盛上げた畔の壁になって、プールのように水を貯める働きをします。田んぼに水をはると土の中は酸欠状態になり、有害物質が死滅して、作物がよく育つ中性の土壌に保たれます。また稲は土と水の両方から養分を吸収でき、川の水がたえず運んでくれる養分が天然の肥料となります。こうして田んぼの土は、毎年米を作り続けても土の力が豊かに保たれるのです。

んぼと自然環境しぜんかんきょう

  • 田んぼは自然環境のサポーター

    1. 水をきれいにします
      土のそうがよごれた水をこし、悪いチッソも分かいして〔無害むがいにして〕放出します。
    2. 洪水こうずい土砂崩れどしゃくずれをふせぎます
      田んぼは雨水をいったんため、ゆっくり放出するので、洪水や土砂崩れをふせぎます。
    3. 気温きおんをちょうせつします
      水蒸気すいじょうきをたっぷり出して、気温が上がるのをおさえます。
    4. 地盤沈下じばんちんかをふせぎます
      地下水と川の水量のバランスをとりながら、雨水をゆっくり地中にしみこませるので、地盤沈下をふせぎます。
    5. 生物のすみかになります
      カエル、トンボ、イナゴ、ドジョウ、フナなどたくさんの生物がすんでいます。

田植たうえのやりかた

機械きかい植え

  •  苗をビニールハウスから田んぼにはこび、田植え機にセットします。1日におよそ2ヘクタール分も植えることができます。列のあいだは30cm、かぶと株のあいだは15cm。田んぼがみるみる苗でうまっていきます。

手植え

  •  昭和45年ころまでは、苗代で作った苗を、1株ずつ手で植えていました。今はもう、山のほうの小さな田んぼなどごく一部でしか見られません。

大型化する田んぼ

 田んぼが長方形で広いと大きな農業機械のうぎょうきかいが使いやすく、農作業をスピーディーにすすめられます。昔の田んぼはおもに、1つのくぎりが10アールでしたが、国や各都道府県ではそれをまとめて30アール(100m×30m)に広げる「基盤整備きばんせいび」をすすめてきました。
 いま、平野部のほとんどが大きな長方形ですね。
 農業機械もますます大型になり、いろいろな機能きのうをそなえ、ねだんも高くなっています。さいきんは農家がグループで機械を買ったり、会社をつくって仕事をシステム化したり、農業のやり方も大型化しています。

なえ生長せいちょうぶんけつ(かぶわかれ)

  • 分けつ前
    田んぼに植えられた苗は、およそ1週間で土の中にしっかりとあたらしい根をはります。温度おんどが上がるにつれて、葉の数もふえていきます。
  • 約20日後
    葉が5~6枚になると、くきの根もとから新しいくきが生まれ、そのくきからまた次々とくきがふえていきます。これが分けつ〔株わかれ〕です。
  • 約60日後
    分けつは田植えから約2か月後、くきが20本前後になるまでつづきます。分けつが終わると稲は水をあまりひつようとしなくなります。

いろいろな管理かんり

水管理

  •  田んぼの水はかよわい苗をささえ、風雨や、さむさから守ります。寒い日は水を増やし、分けつ後は1週間ほど田を干すなど、こまかく水の管理をします。

雑草ざっそうをとる

  •  新しい根がどんどんのびて肥料分ひりょうぶんを吸収するよう、雑草をこまめにぬきます。また、根に酸素さんそをあたえるための列のあいだをたがやします。

肥料ひりょう農薬のうやく

 農薬のうやく化学肥料かがくひりょうは米を病害虫びょうがいちゅうからまもり、毎年安定した収かくを上げるためのサポーター。ただし使いすぎないように、じゅうぶんな注意がひつようです。このため日本の農薬使用基準のうやくしようきじゅんは世界でもとてもきびしく、使う量、濃度のうど、回数がこまかく決められています。しゅうかく後の米は低温倉庫ていおんそうこで保かんされ、農薬をつかわずに害虫がいちゅうやカビをふせぐことができます。

  • 土の養分をおぎなうための肥料まき
  • 病害虫防除剤、除草剤
  • ヘリコプターによる農薬散布
  • お米をクリーンに保管する低温倉庫
アイガモ農法

 農薬や化学肥料をなるべく使わなくてもいいよう、田んぼでアイガモをはなし飼いにする農法があります。アイガモは害虫や雑草を食べてくれますし、フンは養分ようぶんになるからです。他にも稲作いなさく農家と畜産ちくさん農家が協力して、わらと家畜かちくのフンを発酵はっこうさせた質のよい「たい肥」を地域ぐるみでつくるなど、昔ながらの有機肥料ゆうきひりょうが見なおされています。

いね受粉じゅふん

 5月に田植えをした稲は、夏になると葉を増ふすのをやめ、穂をつくりはじめます。葉のさやの間から穂が顔を出すと1~2日で穂の全体があらわれます。
 1本の穂には70~80個のもみがあり、そのもみ1つ1つが稲の花にあたります。
 穂が出ると同時に先の方からもみ(花びら)が開きはじめ、2~3日で全部のもみが開き終わります。稲は開花する瞬間に、もみの中でおしべの中の花粉がめしべにつき受粉じゅふんします。このあと1カ月ほどかけて、お米ができます。

  • 稲のもみが開くようすを観察しましょう。穂にびっしりついている緑色のもみが開きはじめ、黄色っぽいおしべが見えてきました。このとき、すでにおしべの先の袋がやぶれ受粉しています。
  • 開花が始まってから10~20分くらいでもみは完全に開き、おしべが外に飛び出します。
  • 開きはじめてから1~2時間ほどで、もみはおしべを外に残して、ふたたびしっかりととじます。

んぼをおそうギャングたち

 お米が実るころになると、豊作ほうさく凶作きょうさく、平年なみなど、今年の収穫しゅうかくについてのニュースが伝えられます。
 田んぼをおそうギャングたちは、水不足みずぶそく冷害れいがい台風たいふう病害虫びょうがいちゅう、すずめやカラスなど、心配したらきりがないほど。

  • 稲穂をついばむすずめの大群
  • 寒さでやられた稲
  • イモチ病などの病気
  • 水不足で干上がった田んぼ

稲刈いねかりヒストリー

縄文じょうもん時代の終わり〔約2700年前〕

  •  道具は石や木でできた、そぼくなもの。沼などに種もみをじかにまき、稲かりは石の包丁で、穂先だけをかり取っていました。

明治めいじ昭和しょうわ

  •  明治になると全国的に農作業のうさぎょうに馬や牛を使うようになり、昭和40年代に入ると耕運機こううんきなどの農業機械のうぎょうきかいが広がりはじめました。
     稲刈りは根元からカマで、かるようになりました。その後は「はさ」と呼ばれる木にかけて干し、脱穀だっこくします。今も山あいなどの小さな田んぼの稲かりはこのスタイルです。

現在

  •  平野部へいやぶの田んぼの米作りにはトラクター、田植え機などの大型農業機械おおがたのうぎょうきかいが使われ、稲かりにはコンバインが大かつやく。みるみるかり取り、脱穀だっこくして、もみを袋につめるところまでやってしまいます。