秋田でプロバスケットボールチームを立ち上げた先駆者、秋田ノーザンハピネッツ株式会社代表取締役社長の水野勇気さんをゲストにお招きし、船木会長と新春対談を行いました。
会長 新年あけましておめでとうございます。JAグループ役職員の皆さまにおかれましては、良き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。秋田ノーザンハピネッツ株式会社 代表取締役社長の水野勇気さんをお招きしました。私たち役職員への新春メッセージとして、秋田を元気にするための挑戦や改革などについて伺い、新鮮な気持ちで新しい年をスタートできればと思っております。水野社長、あけましておめでとうございます。
水野 あけましておめでとうございます。いつも応援いただきありがとうございます。
会長 今年は秋田ノーザンハピネッツ10年目と伺いました。10年でよくここまで来られたと感服します。応援するブースターの皆さんやバックアップ体制など盤石な基礎が築かれている表れですね。
水野 秋田のブースターの皆さまは、日本一の熱量で応援をしてくださいます。アウェーの試合にも来てくれて、間違いなく選手たちにとって頑張ろうと思える存在です。
◆スポーツは人と地域のパワー
会長 なぜ、プロバスケットボールチームを作りたいと考えたのですか。
水野 アメリカとオーストラリアに留学した経験がバスケットチームの立ち上げ活動につながりました。プロスポーツ大国では、ある程度の規模の町には地元チームがあり、それを地域の人たちが応援しています。そんな光景を目の当たりにし、国際教養大学を卒業後「秋田にプロスポーツチームがあれば、新しい楽しみができる」と確信しました。秋田は能代工業高校や、天皇杯で日本一になった秋田いすゞなど、バスケット文化のベースがあります。また、秋田の冬は雪が降って楽しみが少ない。農家の人もひと段落の時期だと思い、そんな時こそ室内で楽しめるバスケットボールはピッタリじゃないかって発想を巡らせました。
会長 地域の気候や文化に合ったスポーツを、地域の人と育てていくという精神がチーム誕生の根底にあるのですね。
水野 地域と共に楽しめることは常に大切に考えています。能代市で行われたホームゲームでは能代市役所の「ねぎ課」の皆さんと協力して白神ねぎのキャンペーンをさせていただき、農家の方にも応援に来ていただきました。
会長 地域と一緒に育んでいくという意味では、秋田ノーザンハピネッツは旧上新城中学校を拠点に農業を中心とした地域活性化にも取り組んでおられ、中学校の体育館ではジュニアユースの育成も行っていらっしゃいますね。スポーツを通した支援やネットワークができることで、地域とそこに住む人が元気になり、若い人が地元に残るきっかけになることも考えられますね。
水野 はい。人口減少は大きな課題ですが、人口が減少していくことで、秋田ノーザンハピネッツが観客数8千人規模のビッグクラブに育つことが難しいと、私は全く思っていません。秋田市の人口は2040年には24万人 ※1と予測されています。サッカーの事例ですが、「松本山雅FC」のある長野県松本市の人口は24万人。それでありながら、平均観客数が1万6千人を超えています。サッカーは週末1試合で、バスケットが週末2試合と考えても、半分の8千人は動員できる数字です。大事なのは私たちがどうやってそこへ向かって努力をするかということ。常に客観性を持って、他と比較をし、高い目標を一つ一つ、階段を上るように成し遂げていくことが大事だと考えています。
◆新たな年への抱負 挑戦と改革
会長 JAでは現在「自己改革」に取り組み実践しております。一方秋田ノーザンハピネッツは企業理念に「新しい挑戦」という言葉を掲げていらっしゃいます。新しいことへのチャレンジには勇気とエネルギーが必要で、時間もかかります。組織を発展・成長させるには重要なことですね。
水野 そうですね。ゼロから新しいチームを作ることで生まれた会社なので、企業文化として常に新しいことに挑戦していきたいという思いがあります。私たちは「ハッピーとワクワク」と表現しているのですが、面白いこと、楽しいことをして、皆さんに喜んでもらいながら、成長したいという思いがあります。B1で戦うには常に高いレベルを求められますし、達成すべき課題が多くあります。苦戦している時こそ、ヘッドコーチや選手たち、それを支えるフロントスタッフたちが一丸となって挑戦する必要があります。固定概念や、今までの常識にとらわれるとイノベーションは生まれないので、自分たちの限界を決めない組織であり続けたいですね。
会長 常に現状から脱皮して成長していくということでしょうか。我々の組織にもいえることですが、同じことを毎年繰り返していては成長しません。常にチャレンジし、新鮮な感覚でまた新しく伸びていくことが非常に大事です。
水野 今年の夏は秋田ノーザンハピネッツ10周年の大きな節目です。さまざまな企画事業を考えているので楽しみな1年でもあります。10周年をB1で迎え、かつ優勝を狙えるようにしていくために目の前の勝利を重ねていきたい。そのためにも、皆さんにますます期待していただける2019年にしたいです。
会長 我々JAグループも、お米だけではなく、今取り組んでいる園芸メガ団地や畜産、果樹など、品目を拡大して産出額を伸ばし、ステップアップしていかねばなりません。そのために、課題の一つである農業の労働力不足がテーマになってきます。後継者や若い担い手をサポートし、海外からの受け入れなども考えながら基盤づくりをしていく必要があるでしょう。各市町村でも新規就農を支援する取り組みをしています。力を合わせて協力すれば、いろんなものを拡大して一番良い結果を得られると信じています。新しい年も、ぜひ一緒に秋田を盛り上げていきましょう。本日はありがとうございました。
水野 こちらこそありがとうございました。
●水野勇気(みずの・ゆうき)1983年生まれ、東京都杉並区出身。国際教養大学卒業後、08年に「秋田プロバスケットボールチームをつくる会」を発足。09年に秋田プロバスケットボールクラブ株式会社(現・秋田ノーザンハピネッツ株式会社)代表取締役社長に就任。
●船木耕太郎(ふなき・こうたろう)1948年生まれ、秋田市出身。JA秋田中央会会長、JA全農あきた運営委員会会長、JA秋田厚生連経営管理委員会会長、JA共済連秋田運営委員会会長を務める。
※1 総務省 国勢調査及び国立社会保障・人口問題研究所 将来推計人口(2018年3月推計)によると、2040年の秋田市人口は244,726人と推計されている。
[編集・ディレクション]株式会社Clover Plus [撮影]株式会社PHOTOX [装花]株式会社greenpiece
~月刊広報誌「かけはし」1月号より~